放射性セシウムの無害化

(2011.08.04 by 吉岡英介)


福島原発から「放射性セシウム」55Cs137が東北と関東の大地に放出されています。

たとえばそれが稲わらに付着し、それを食べた牛の肉がセシウムで汚染されました。


別の話ですが、なぜ牛に稲わらを食べさせるかというと、稲わらに固有の乳酸菌が牛の肉をやわらかくしてくれるのだそうです。稲わらも米ですから、米固有の乳酸菌にはいろいろな力があるということです。



そのセシウムの放射能が、バクテリアによって無害化されるという話があります。



セシウムの放射崩壊

まず、ウランが分裂して半分くらいの大きさのセシウムが出来ます。
これは自然界にはほとんど存在しないもので、原発や原爆のウランから作られます。

セシウムは陽子が55個、中性子が82個、合計137個の核子(陽子と中性子の総称)から出来ています。それを55Cs137と書き表します。



電子はマイナスの電気を帯びています。
陽子は電子1個分に相当する量の、プラスの電気を持っています。
中性子は電気的に中性(ゼロ)です。

中性子は陽子1個と電子1個からできているようです(下図)。



この式で電子を左辺に移項すると、中性子-電子=陽子 となります。
つまり中性子から電子1個が放出されると、その中性子はプラスの電荷を持つ陽子になります。

原子核の中の中性子から電子が放出される崩壊の仕方をベータ崩壊と言います。

放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線の3つがあり、アルファ線は原子核の破片(アルファ粒子)が飛んでくること、ベータ線は電子が飛んでくること、ガンマ線は強い光が飛んでくることです。

セシウム 55Cs137 はベータ崩壊します。
原子核の中の中性子から電子が1個放出されて、その中性子は陽子に変わります。
すると陽子が1個増えて56個になり、中性子は1個減って81個になります。

陽子の数(原子番号と言います)が原子を決めています。
陽子が56個という原子は、もうセシウムではありません。
陽子が56個の原子はバリウムと言います。

セシウムはベータ崩壊して、いったんバリウムの準純安定状態になり、それからすぐにガンマ線を放出して安定状態のバリウムになります。(下図)




セシウムが体内に入ると、ベータ崩壊して電子が飛び出し、それが細胞を傷つけます。さらにガンマ線を出し、それも細胞を傷つけます。崩壊し終わって安定的なバリウムになると、それ以上の悪さをしませんから、無害になります。

原子核の崩壊は確率的に起こり、100個のセシウムのうち50個が崩壊してバリウムになるのに約30年かかります。
これを半減期といいます。セシウムの半減期は約30年で、大地にあっても体内に入っても、半減するのに30年かかります。


飯山一郎氏の新説

さて、乳酸菌運動を起こした飯山一郎氏が、興味深いことを語っています。

http://grnba.com/iiyama/#ws1031

◆2011/07/15(菌) 光合成細菌はセシウムを無害化する!

光合成細菌.この菌は,人間の体細胞が細胞内で酸素(オーツー)を活性酸素(オースリー)にするように,電子を操作する能力があるという.
「電子を操作するというより,「電子銃」を持っているといったほうがいい!」と言ったのは,分子生物学を専攻する某製薬会社のW研究員だ.
彼の学説は,頭の硬い,または古い学問分野を信じている人間から見れば,「トンデモ学説」なのだが,製薬会社の研究室で実証しているので,真実だと信じる以外ない.きょうは思い切って彼の「トンデモ学説」を話してしまおう.

光合成細菌.この菌は高効率スクリューで放射性物質のところに泳いで行って,放射性物質,たとえばセシウム137の原子1個を細胞内に取り込む….

これはなぜか?

セシウム137が出す放射線という核エネルギーを利用するためである.
ところがセシウム137は,簡単には放射線は出さない.セシウム137の半減期は30年だが,これはセシウム原子の半分が放射線を発射して原子崩壊し,バリウム137になるのに30年もかかるということだ.
そこで光合成細菌はセシウム137に「電子誘導銃」を発射する.これは,セシウム137に放射線を出させるためである.実際,光合成細菌の体内に取り込まれたセシウムは,「電子銃」打ち込まれると,ついつい,うかうかと放射線を発射してしまう….こうして光合成細菌は,セシウム137の核エネルギーを受領するのである.

一方,セシウム137は光合成細菌に放射線という核エネルギーを与えた瞬間,原子崩壊してバリウムに変身し,放射線を出さない物質になる.

これを放射性物質の無害化というか? 生物学的原子転換というか?
ともかく,光合成細菌は放射性物質をエネルギー源として利用してきた….

「飯山さんは,光合成細菌が放射性物質を無害化する! と言い切れる?」とW研究員は真剣な顔で私に訊く.「ま,そんなことブログなどで書いたら,俺たちをバカにするバカがいるからなぁ」と私は態度をにごしてきたのだが…,
きょうは,なんか,ついつい,シャベってしまったようだ….



なんと、光合成菌はセシウムの原子核に電子銃を撃ち込んで、ベータ崩壊をうながすことができるということです。

私は学生の時、原子核の崩壊定数は変化するか?というテーマで実験をしていました。その結果、電場や磁場や圧力や重力をかけることで、原子核の崩壊スピードはごく微小ですが変化する、という実験結果となりました。しかしそれによる半減期の変化などは微々たるもので、何かの役に立つような話ではまったくありませんでした。

飯山氏はバクテリアがそれをやってくれると言うのです。

そんなことができるのかなぁと思いましたが、あるとすれば、セシウムの崩壊が電子を放出するベータ崩壊であることが、生物が関与できるポイントかも知れません。電子のやりとりは生命活動の範囲内だからです。

そう思っているところに、福島から興味深いニュースが伝わってきました。

福島民報
http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=9873865&newsMode=article


バクテリアの除染に効果 飯舘の水田、線量が大幅低下

南相馬市、飯舘村で微生物を活用した除染実験に取り組んでいる田崎和江金沢大名誉教授(67)は2日、放射性物質を取り込む糸状菌のバクテリアを発見した同村長泥の水田の放射線量が大幅に下がったと発表した。南相馬市役所を訪問し、桜井勝延市長に報告した。
水田の表面は毎時30マイクロシーベルトの高い放射線量だったが、7月28日には1桁台に下がっていた。水田では無害のバリウムが確認されており、田崎名誉教授はバクテリアの代謝によって放射性セシウムがバリウムに変わったとみている。
金沢大低レベル放射能実験施設で水田の土1キロ当たり447ミリグラムのバリウムを検出した。バリウムは通常、土壌からは検出されないという。今後の除染実験に使用するため、バクテリアの培養も行っている。
同村長泥の放射線量が高い湿地で根を伸ばしたチガヤも確認した。根にはカビ類が大量に付着、除染効果との関係を調べる予定。
南相馬市原町区の水田では、バクテリアと、粘土のカオリナイト、ケイ藻土の粉末を使って稲を栽培、除染効果を確認している。
報告には、実験に協力している同市の庄司建設工業の庄司岳洋副社長、庄建技術の佐藤直営業部長、高橋正則技師長が同席した。
成果は学会誌「地球科学」に発表する。

(2011/08/03 09:42)


ここで言われている糸状菌と、飯山氏が言う光合成菌は、類似のものなのでしょう。


ところで、このところ大雨が続きました。

雨が降って川にあふれる「濁流」のあの茶色い色は土の粒の色です。
日本はしょっちゅう雨が降って大地を洗い流してくれます。福島も洗われました。
広島や長崎で回復が意外に早かったのは雨がたくさん降ったからだと思われます。

そして水があればバクテリアが活躍します。

あちこちでバクテリアによる放射能除去が研究され始めたようです。

乳酸菌運動を頭ごなしに否定する人は、もう少し勉強したほうがいいようです。


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