discussionマネーフォーラム


ザ・経済闘論 米国発金融不安の真相

日経CNBCが3月25日に放送する「ザ・経済闘論 防げるか世界景気後退」と連動。米国発の金融混乱の行き着く先を、番組出演者がネット上で先行議論する。

「サブプライム」は発端に過ぎない

(2008/03/19)

(くさの・とよみ)76年(昭51年)神戸大卒。HSBC証券日本株式営業統括ダイレクター、クレディアグリコル・インドスエズ証券(現カリヨン証券)取締役副支店長を歴任。06年に草野グローバルフロンティアを設立、外国人投資家やヘッジファンド動向を分析。

◇草野豊己(草野グローバルフロンティア代表)
 世 界の金融市場は世界で同時に多発する、誰も経験したことがない「21世紀型金融危機」に巻き込まれている。金融派生商品市場の規模があまりにも大きくな り、現物の市場、さらには実体経済までも左右している。金融派生商品で起きていることを把握せずに、今起きている問題の本質は理解できない。

■サブプライム問題ではなくクレジットバブル
 そもそも「サブプライムローン(米国の信用力が低い個人向け住宅融資)問題」などと軽々しく呼んではいけない。米国から世界市場を揺るがすまでになった一連の問題の実態は、ヘッジファンドが支えた「クレジットバブル」の膨張とその収縮だ。サブプライム問題はその一部であり、発端となったにすぎない。

 ヘッジファンドは2つの経路でこの信用膨張を支えた。1つ目が信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場への参入だ。もともとは金融機関が与信先の企業が倒産した場合の損失を回避・軽減するために使っていた市場だった。

 それが2004年にヘッジファンドの運用資産が1兆ドルを超えたころから、彼らが新たなCDSの売り手、つまりオプション料を受け取る側として参入し始 めた。運用難と過当競争に苦しんでいたヘッジファンドの資金流入がオプション料を低下させた。CDSの主な買い手である金融機関は従来よりも低いコストで 融資や社債の引き受けに伴うリスクをヘッジできるようになった。

■ヘッジファンドが信用膨張を加速
 2つ目の信用膨張の経路が、住宅ローン担保証券(RMBS)や、さらにこれを組み替えて再証券化した債務担保証券(CDO)を扱う証券化商品市場だ。デフォルト時に最初に損失を被るハイリスク部分(エクイティ)やこれに次ぐリスク部分(メザニン)の引き受け手としてヘッジファンドが参入した。

 ハイリスク・ハイリターンであるエクイティやメザニンには従来、買い手が付きにくく、証券化商品を組成した金融機関は自分で保有するしかなかった。ここにもヘッジファンドが積極投資したため、金融機関は証券化商品組成のアクセルを踏み続けた。

■米GDPの3倍に急膨張したCDS
 CDS市場の規模は04年の年央には5兆ドル程度だった。それがわずか3年間で一気に45兆ドルに達した。米国の国内総生産(GDP)の3倍にも匹敵するクレジットバブルが膨らんだ。
(45兆ドル=4500兆円!!:注by飯山)

 信用リスクのヘッジコストの低下と証券化商品市場の拡大を背に、金融機関はサブプライムローンや、ヘッジファンド、投資ファンド、不動産ファンド向けのレバレッジドローンを拡大させ、信用膨張のスパイラルが続いた。

■バブル膨張以前までの株価調整も
 こうして生まれた行き過ぎた信用膨張がついに縮小に向かい始めたのが現状だ。ヘッジファンドや投資ファンド、不動産ファンドから、個人の住宅ローンやクレジットカードに至るまで、ありとあらゆる分野で信用収縮の動きが続いている。

 「クレジットバブルの宴」というひとつの時代が終わるのだとすれば株式相場もIT(情報技術)バブルが弾け、またクレジットバブルが芽生え始めた04年 時点まで戻ることになる。米ニューヨークダウ30種平均株価で1万ドル、あるいは日経平均株価で1万1000円程度までの調整はあっても当然だ。

いかに永く生きたかではなく いかに良く生きたかが問題だ.(セネカ)
☆GRNBA☆